プーチン大統領はインド訪問中、モディ首相との共同記者会見で、トランプ政権からロシア産原油の輸入停止を迫られているインドに対し、「燃料を途切れなく供給する用意がある」と表明した。
制裁の抜け穴か? 印露のエネルギー貿易
ロシアのウクライナ侵攻を受けてアメリカは「ロシアの戦争資金になっている」として、対ロシア経済制裁の一環でインドのロシア産原油購入に追加で25%の関税を課している。
なお、インドはロシア産の原油の値崩れを好機として低価格でロシア産の原油を大量に輸入し、その後に他国に販売することで相当な利益を得ているとされ、この国ぐるみの転売とも形容されかねない行動に関してはロシアの戦争継続のための財源を提供しているとして非難の声が西側諸国から上がっていた。
「第三極」との連携強化とエネルギー外交
プーチン大統領とモディ首相は会見前に結ばれた協力協定を称賛し、モディ首相はロシア国内に新たなインド総領事館が開設されることにも言及した。先日にはエジプトでロシアが全面的に建設を支援する原子力発電所が竣工し、エジプトとの関係の強化を内外にアピールしていただけに、いわゆる第三極の有力な国々と接近を試みる動きの一環であるとも捉えられるだろう。
なお、インドやエジプトはエネルギー需要が極めて活発であり、常に電力のひっ迫に悩んでいることから、米国の制裁を加味してもロシアによるエネルギー資源の供給は極めて魅力的なものである可能性が高く、それらの国のロシアへの接近を妨害するにはロシアに代わる安価なエネルギーの供給国として米国や西側諸国が協調する必要がある。しかしながら西側諸国の多くはエネルギー価格の高騰に悩んでいるため、ロシアによるエネルギーを武器にした外交攻勢には防戦一方とならざるを得ないだろう。
ウクライナ情勢と交渉への布石
一方で、米国が和平仲介を試みる中、プーチン大統領はあらためて「ウクライナがドンバス地方から撤退しなければ、ロシアが武力で奪う」と警告した。
これは交渉を有利に運ぶための戦争継続意思のアピールとも考えられるが、先述のインドとの接近などを考えれば、少なくとも財政面において、ロシアが外貨を欲していることは明白であり、交渉が不成立となった場合の制裁の長期化をも見据えた戦略の一環としても今回のインドへの接近は考えることができるだろう。
参考
https://www.bbc.com/news/live/cjwyqpn8252t
https://www.pmindia.gov.in/en/image-gallery/#gallery1168-7
https://www.pmindia.gov.in/wp-content/uploads/2025/12/02.jpg, GODL-インド, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=165444569による
Kremlin.ru, CC 表示 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=175822381による